作・演出 滝本祥生よりごあいさつ

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 本番を目前に、目下俳優さん達と試行錯誤中。

 再演とか関係ありませんね。

 そうなのです、今回は2011年に上演した作品の再演、すでにかなり変わっています。

 

 この物語を書いたのは、ある写真を新聞で見つけたことがきっかけでした。

 

工員さん達の後ろ姿、その向こうには時を止めた機械、そして「120年間おつかれさまでした。そしてありがとうございました」の文字。TOSHIBA2011年、様々な広告賞を受賞した写真です。

 

私は、恥ずかしながらその時に初めて白熱電球の製造中止を知りました。

 

子供の頃から、あたりまえのようにあった白熱電球が無くなってしまう。驚きと共に、今まで漠然として捉えることしかなかった「時代」というもの、変化していくそれを実感しました。

 

白熱電球が無くなってしまうことは、私に取ってこの世にあるすべての物はいつか消えて無くなる運命にあることを、物語っていました。

 

と、同時に工員さん達の後ろ姿に釘付けになりました。

 

それは撮影のためにポーズをした訳じゃない本心が表れた背中の様に見えました。休まず働いてきた機械に、作り続けてきた先人の汗に、考えられないほどの長い時間、灯りの向こうにある生活、心から感謝と敬意を表した様な背中。これは白熱電球だけではなく、日本の物作りを支えてきた人たちの背中だと思いました。

その気持ちは、実際に製造されている工場「細淵電球」さんで働く皆さんと触れあい更に深まりました。

 

この思いを何とかして残したい、ものづくりにかける人びとの思い、それは働く人全ての思いでもあります。そんな気持ちに突き動かされて、この「中ノ嶋ライト」を書きました。

 

2011年、東日本大震災直後の初演でも描き好評だった、抗えない大きな波に飲み込まれて行く人びとの様はそのままに、今回は更に、変化を強いる様な社会へのメッセージを込めて上演します。そして生演奏も交えた表現性豊かな作品としてブラッシュアップ、今回の再演となります。

 

時代の波に抗いつつも衰退していく白熱電球工場を通して、去りゆく時や人びとや物への感謝と、日常の儚さを伝えていきたいと考えています。

 

 

とはいえそんな小難しい物語では全くありません。

 

見ていただいた皆様に「いろいろ無くなっていくんだなあ」なんて、思い出していただけたら幸いです。                     

                                作・演出 滝本祥生